仮想通貨は本人確認なしで取引できる?犯収法上のリスクを解説

法規制

この記事のポイント

仮想通貨の本人確認なし取引は、犯罪収益移転防止法と資金決済法により国内登録業者では認められておらず、無登録業者の利用や海外取引所の匿名利用には資産凍結、詐欺被害、無登録営業の刑事罰といった重大なリスクが伴います。

仮想通貨は本人確認なしで取引できる?犯収法上のリスクを解説

「仮想通貨を本人確認なしで取引する方法があると聞いたが、法律に触れないか不安に思う」

こうした疑問に答えます。

本記事の内容

本記事の内容

  • 仮想通貨を本人確認なしで取引する方法の実態
  • 本人確認が義務付けられる法的根拠
  • 本人確認なし取引に潜むリスクと法的責任

仮想通貨の本人確認なし取引は、国内の登録業者を通す限り認められていません。海外取引所やP2P取引を利用した場合も、法令違反や資産凍結などの重大なリスクを伴います。

本記事を読めば、本人確認が必要な理由と本人確認なし取引に潜むリスクを正しく理解できます。安易な判断による不利益を避けるためにも、ここから順に見ていきましょう。

仮想通貨を本人確認なしで取引する方法はあるのか

仮想通貨を本人確認なしで取引できると語られる背景には、海外取引所やP2P取引の存在があります。そもそも、基本的な本人確認の仕組みであるKYCとは「Know Your Customer」の略語であり、顧客の身元を確認する一連の手続きを指します。しかし国内の登録業者を通す限り、本人確認なしでの取引は制度上できません。

まずは本人確認なし取引がどのような形で語られているのか、実態を整理します。

本人確認なしで仮想通貨を売買できるとされる方法

匿名で仮想通貨を扱えるとされる方式には、本人確認をオプション扱いにする中央集権型取引所、管理者が存在しない分散型取引所、利用者同士で直接やり取りするP2P取引の3つがあります。P2P取引では、銀行振込や決済アプリを介して日本円と仮想通貨を交換する形が語られることもあります。

いずれの方式も、金融庁の登録を受けた国内の暗号資産交換業者を経由しない取引です。取引の相手や資金の流れが不透明になりやすく、後述するとおり重大なリスクを伴います。

国内取引所で本人確認なし取引ができない理由

国内の暗号資産交換業者は、2017年に施行された改正資金決済法により、金融庁への登録と本人確認の実施が義務づけられました。2020年の改正でも規制は強化され、本人確認は口座開設時に必ず求められる手続きです。

このため、国内の登録業者を利用する限り、本人確認を省略して取引を始めることはできません。本人確認なしをうたうサービスは、国内の登録業者ではない可能性が高いといえます。

海外取引所やP2P取引が語られる背景

海外取引所の中には、日本の登録を受けずに本人確認をオプション扱いとしているところがあります。国際的にはマネーロンダリング対策として送金規制のトラベルルールの適用が進んでおり、匿名での完全な取引は年々難しくなっています。

実際、大手海外取引所が日本人利用者への対応を段階的に制限する動きも出ています。本人確認なしをうたう環境は縮小傾向にあり、突然の規制変更で出金できなくなる事例も報告されています。

仮想通貨の本人確認が義務付けられる法的根拠

仮想通貨の本人確認は、任意のサービスではなく法律で定められた義務です。犯罪収益移転防止法と資金決済法という2つの法律が根拠になっています。

それぞれの内容を見ていきます。

犯罪収益移転防止法における特定事業者の位置づけ

犯罪収益移転防止法は、マネーロンダリングやテロ資金供与を防ぐための法律です。これらは金融取引におけるKYCの法的な根拠となっており、暗号資産交換業者も特定事業者に位置づけられ、一定の取引を行う際に取引時確認を義務づけられています。

対象となる特定取引には、暗号資産の売買や交換、200万円を超える暗号資産の交換、10万円を超える暗号資産の移転などが含まれます。なりすましの疑いがある取引や特定国の居住者との取引は、より厳格なハイリスク取引として扱われます。

資金決済法における暗号資産交換業者の登録制度

資金決済法は2017年の改正で、国内で暗号資産と法定通貨を交換するサービスに登録制を導入しました。登録を受けた事業者だけが、国内で暗号資産交換業を営めます。

登録の審査プロセスは厳格で、申請から登録まで半年程度かかるとされています。登録業者は限られており、無登録のまま交換業を営むことは資金決済法違反にあたります。

取引時確認で確認される内容

取引時確認では、個人の場合は氏名・住所・生年月日、法人の場合は名称と本店所在地などの本人特定事項を確認します。あわせて、取引目的や職業といった事項も確認の対象です。

暗号資産交換業者は、確認した内容や取引の記録を作成し、一定期間保存する義務も負います。これらの記録は、不正な取引が疑われた際に当局へ届け出るための基礎になります。

本人確認なしの仮想通貨取引に潜むリスク

本人確認なしの仮想通貨取引は、規制の枠外に置かれるため利用者を守る仕組みが働きません。ここでは代表的な4つのリスクを整理します。

資産凍結や出金制限が発生するリスク

海外取引所や無登録業者は、規制の変更によって突然本人確認を求めることがあります。応じなければ出金できない資産ロックの状態に陥り、資金を引き出せなくなる事例が報告されています。

流入した資金が犯罪収益と疑われた場合も、口座やアカウントが凍結される可能性があります。本人確認を行っていないと、凍結の解除に必要な本人確認手続きそのものができず、資産が長期間拘束されかねません。

詐欺や資金持ち逃げに遭うリスク

無登録の海外業者は金融庁の監督が及ばないため、詐欺的な運営が行われても発覚しにくい傾向があります。マッチングアプリやSNSで知り合った相手から無登録取引所への登録を勧められ、高額投資後に出金できなくなる被害も相次いでいます。

このような手口では、最初に少額の出金を成功させて信用させたあと、高額な入金を促す流れが典型的です。本人確認がない環境ほど、被害者が事業者の実態を確認する手段を持ちません。

マネーロンダリングに巻き込まれるリスク

本人確認なしの取引は、匿名性の高さから資金洗浄の経路として利用されやすいという特徴があります。実際に仮想通貨のマネーロンダリングの手口として悪用された事例もあり、利用者が意図せずその経路に組み込まれる可能性があります。

自分の口座が一時的に資金移動の経由先として使われた場合、捜査の対象になったり口座が凍結されたりするおそれもあります。取引相手や資金の出どころが不透明な取引は、それ自体がリスクの要因です。

トラブル時にサポートを受けられないリスク

本人確認を行っていないアカウントは、パスワード紛失や不正アクセスが起きた際の本人確認による復旧が難しくなります。無登録の海外業者では、日本語サポートや相談窓口が整っていないことも珍しくありません。

国内の消費生活センターや金融庁の相談窓口も、無登録業者との取引トラブルでは対応に限界があります。トラブルが起きても自己解決を迫られる可能性が高い点は、大きなリスクといえます。

本人確認なし取引に関わった場合の法的責任

本人確認なしの仮想通貨取引には、利用者自身にも法的なリスクが及ぶ可能性があります。無登録業者の利用、罰則の対象、当局への把握という3つの観点から確認します。

無登録業者を利用した場合の責任

資金決済法上、暗号資産交換業を登録なしで営むことは違法です。実際に、無登録のまま暗号資産の交換を行ったとして書類送検や逮捕に至った事例が報告されています。

事業者側だけでなく、無登録業者と知りながら継続的に取引を行う利用者も、資金の流れを問われる立場になり得ます。取引の相手が登録業者かどうかは、事前に金融庁の登録一覧で確認できます。

本人確認義務違反に科される罰則

資金決済法第107条では、登録を受けずに暗号資産交換業を行った場合、3年以下の懲役、300万円以下の罰金、またはその両方が科されると定められています。無登録での交換業運営は、事業者にとって重い刑事責任を伴う行為です。

現在、無登録営業に対する罰則をさらに強化する見直しも検討されています。規制は緩和ではなく強化の方向に進んでおり、本人確認なし取引を取り巻く環境は今後も厳しくなる見通しです。

疑わしい取引として当局に把握される可能性

暗号資産交換業者は、取引が犯罪収益に関わる疑いがあると判断した場合、所管の行政庁に疑わしい取引として届け出る義務を負います。届け出られた情報は警察庁で集約・分析され、捜査機関に提供される仕組みです。

本人確認なしの取引で資金の出どころが不透明な場合、この枠組みの外にあっても、資金移動の記録から取引の実態が浮かび上がることがあります。安易に匿名性を求めた取引が、後になって捜査の対象になる可能性は否定できません。

まとめ:仮想通貨は本人確認なしで安全に取引できない

本記事では、仮想通貨を本人確認なしで取引する方法が語られる実態から、本人確認が義務付けられる法的根拠、そして本人確認なし取引に潜むリスクと法的責任までを解説しました。

本記事のポイントをおさらいします。

本記事のポイント

  • 国内の登録業者を通す限り本人確認なしの取引はできない
  • 犯収法と資金決済法が本人確認義務の根拠になっている
  • 本人確認なし取引には資産凍結や詐欺被害などの重大なリスクがある

本人確認は面倒な手続きに見えますが、資金の安全と取引の透明性を守るための重要な仕組みです。本記事を通じて、本人確認なし取引を避けるべき理由を正しく理解し、登録業者を通じた安全な取引を選ぶ判断につなげられます。

仮想通貨の規制や事業者対応でお悩みの方は、専門家への相談が近道です。詳しい情報や個別のご相談は、以下からお気軽にお問い合わせください。

仮想通貨の本人確認なしに関するよくある質問

参考文献

  1. 無登録業者との取引は要注意!! ~無登録業者との取引は高リスク~|金融庁
  2. 犯罪による収益の移転防止に関する法律|e-Gov法令検索
  3. 事務ガイドライン第三分冊 金融会社関係 16 暗号資産交換業者関係|金融庁

執筆者

Crypto With 編集部
Crypto With 編集部

編集部

B2B特化のブロックチェーン・暗号資産メディア「Crypto With」の編集部。金融機関やIT企業の意思決定者向けに、国内外の最新技術トレンドや日本の法規制動向など、導入判断に直結する客観的なデータに基づく信頼性の高い実務情報を発信しています。

監修者

Crypto With リサーチチーム
Crypto With リサーチチーム

リサーチチーム

「Crypto With」のコンテンツ監修・リサーチを専門に行う調査チーム。国内外の金融規制や暗号資産市場の動向を追う専門家で構成され、データと根拠に基づく客観的な分析レポート、日本の複雑な法規制の解説を提供。金融機関・IT企業の意思決定に必要な情報を信頼性重視で発信します。

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