KYCとは?意味と仮想通貨の本人確認方法をわかりやすく解説

法規制

この記事のポイント

KYCとはKnow Your Customerの略で、金融機関や仮想通貨取引所が利用者の身元を確かめる本人確認手続きです。犯収法にもとづき義務化され、現在はeKYCが主流ですが、2027年の改正で公的個人認証への一本化が進む見通しです。

KYCとは?意味と仮想通貨の本人確認方法をわかりやすく解説

「取引所の口座開設で急にKYCという言葉が出てきたけれど、そもそも何を意味するのかよく分からない。面倒に感じるこの手続きが、本当に自分の資産を守ることにつながるのかも知りたい」

こうした疑問に答えます。

本記事の内容

  • KYCの意味と本人確認としての位置づけ
  • KYCが法律で義務化されている理由
  • 仮想通貨取引所でのKYCの流れと必要書類

KYCとは、金融機関や仮想通貨取引所などが利用者の身元を確かめる本人確認手続きのことです。

本記事を読み進めることで、KYCの基本的な意味だけでなく、2027年に控える犯収法改正でオンライン本人確認がどう変わるのかまで理解でき、安心して取引を始める準備が整います。

KYCとは何か

KYCとは、サービスの利用者が本当に本人であるかを確かめる本人確認手続きの総称です。銀行や証券会社だけでなく、仮想通貨取引所でも口座開設の際に必ず求められます。まずは言葉の意味と、KYCが指す範囲を整理します。

KYCの意味と読み方

KYCは「Know Your Customer」の頭文字をとった言葉で、日本語では「顧客を知る」と訳されます。読み方はケーワイシーで、実務では本人確認とほぼ同じ意味で使われています。

金融の世界では、新しく口座を開く利用者の氏名や住所、生年月日などを確認する手続き全体を指します。仮想通貨の分野でも、取引所が利用者の身元を確かめる一連の仕組みをKYCと呼びます。

KYCが指す本人確認の範囲

KYCには狭い意味と広い意味の2つの捉え方があります。狭い意味では、犯罪収益移転防止法にもとづく法律上の本人確認を指します。

広い意味では、法律で定められた確認にとどまらず、顧客の属性やリスクを把握する取り組み全体を含みます。仮想通貨取引所の場合、口座開設時の書類確認だけでなく、取引開始後も継続的に顧客の状況を確認する取り組みまでがKYCの範囲に入ります。

捉え方対象範囲主な根拠
狭い意味法律上の本人確認犯罪収益移転防止法
広い意味顧客理解とリスク把握全般各業界の自主基準など

KYCとeKYCの違い

eKYCは「electronic Know Your Customer」の略で、オンラインで完結する本人確認を指します。従来のKYCが対面や郵送を前提としていたのに対し、オンラインで完結するeKYCはスマートフォンやウェブだけで手続きを終えられる点が特徴です。

現在の仮想通貨取引所では、このeKYCが主流になっています。本人確認書類の撮影と顔写真の送信によって、申し込みから最短数分で取引を始められる仕組みが広がりました。

KYCが必要とされる理由

KYCが世界中で義務づけられているのは、金融サービスを犯罪から守るためです。仮想通貨は国境を越えて素早く送金できる特性を持つため、悪用を防ぐ本人確認の重要性がとくに高くなります。ここでは、KYCが求められる3つの理由を見ていきます。

マネーロンダリング対策としての役割

KYCの最も大きな目的は、仮想通貨のマネーロンダリング(資金洗浄)やテロ資金供与を防ぐことです。犯罪で得た資金の出所を分からなくする行為を防ぐには、資金の入り口で利用者の身元を押さえておく必要があります。

仮想通貨は匿名性が高いと誤解されがちですが、取引所を経由する時点で本人確認が行われます。この仕組みがあることで、不正な資金の流入を早い段階で止められます。

犯罪収益移転防止法による義務化

日本では、犯罪収益移転防止法(犯収法)がKYCの根拠になっています。この法律は2007年に成立し、金融機関や仮想通貨交換業者などの特定事業者に対して、金融取引におけるKYCを義務づけています。

犯収法で確認が求められる本人特定事項は、個人の場合、氏名と住所、生年月日の3項目です。仮想通貨交換業者はこの確認を怠ると行政処分の対象になるため、法令に沿った厳格な運用が求められます。

利用者を保護する仕組み

KYCは事業者のためだけの手続きではありません。利用者本人にとっても、なりすましや不正利用から自分の資産を守る仕組みとして機能します。

第三者が勝手に口座を作ったり、他人になりすまして資金を動かしたりすることを防げます。取引所側が利用者を正しく把握しているからこそ、健全で透明性の高い市場が保たれ、安心して取引に取り組める環境が整います。

KYCで行う本人確認の種類と方法

KYCと一口に言っても、確認の中身はいくつかの要素に分かれます。個人向けと法人向けでも手続きが異なり、オンラインで完結する方式にも複数の種類があります。ここでは本人確認の全体像を整理します。

身元確認と当人認証の違い

個人の本人確認は、大きく身元確認と当人認証の2つに分けられます。身元確認は、書類などを使って利用者が実在し、その情報が本人のものだと確かめる手続きです。

当人認証は、すでに登録された利用者が確かに本人であるかを確かめる手続きを指します。口座開設時に行うのが身元確認、ログイン時などに行うのが当人認証と考えると分かりやすいです。

種類確認するタイミング主な方法
身元確認口座開設などの登録時本人確認書類の確認
当人認証ログインや取引の実行時パスワードや多要素認証

対面と非対面それぞれの手法

本人確認の手法は、対面と非対面に分かれます。対面は店舗などで職員が直接確認する方法で、非対面は来店せずに手続きを済ませる方法です。

非対面はさらに、郵送を使う手法とオンラインで完結するeKYC、公的個人認証を使う手法に分けられます。仮想通貨取引所では、スピードと利便性の高いeKYCが広く使われています。

eKYCで使われる主な方式

eKYCの方式は、犯罪収益移転防止法の施行規則で複数定められています。代表的なものを整理すると次のとおりです。

  • ホ方式 本人確認書類の撮影と顔写真の撮影を組み合わせる方法
  • ヘ方式 顔写真とICチップの読み取りを組み合わせる方法
  • ワ方式 マイナンバーカードのICチップを読み取る公的個人認証(JPKI)を使う方法

これまではホ方式が主流でしたが、偽造書類による不正が問題視され、今後はICチップを読み取る方式へと移行が進んでいます。

法人を対象とする本人確認

法人が取引を行う場合には、個人とは別の確認が必要になります。会社が実在するかを確かめる存在確認や、登記された所在地を確かめる住所確認が代表例です。

あわせて、実際に手続きを担当する個人のeKYCや、取引の権限を持つことを示す委任状の確認も行われます。反社会的勢力との関わりがないかを調べるリスクチェックも、法人確認の重要な要素になります。適切な管理体制を築くために法人のKYCコンサルティングを導入する企業も少なくありません。

仮想通貨取引所におけるKYCの流れ

仮想通貨取引所で口座を開くには、KYCの完了が欠かせません。多くの取引所がスマートフォンだけで完結するeKYCを導入しており、手続き自体はそれほど複雑ではありません。ここでは確認される情報と必要書類、実際の手順を順に説明します。

口座開設で確認される情報

取引所が口座開設時に確認するのは、犯収法で定められた本人特定事項が中心です。具体的には氏名と住所、生年月日を確認します。

これに加えて、国籍や職業、取引の目的、資産状況などの属性情報を尋ねられる場合もあります。これらはリスクを見極めるための顧客管理の一環で、正確に回答する必要があります。

必要となる本人確認書類

提出が必要なKYC書類は取引所ごとに異なりますが、代表的なものは次のとおりです。

  • 運転免許証
  • マイナンバーカード
  • パスポート
  • 在留カード

スマートフォンでのeKYCでは、運転免許証やマイナンバーカードのみを有効とする取引所も多くあります。本人確認書類とは別に、マイナンバーの提出を求められる点にも注意が必要です。

申し込みから取引開始までの手順

eKYCを使った口座開設は、次のような流れで進みます。基本的な操作はスマートフォン一台で完結します。

  1. メールアドレスの登録と口座開設の申し込みを行う
  2. 氏名や住所などの基本情報を入力する
  3. 本人確認書類と自分の顔をカメラで撮影して送信する
  4. 取引所側の審査を経て口座開設が完了する

審査が自動化されている取引所では、最短で数分から10分程度で取引を始められます。混雑状況や書類の不備によっては時間がかかる場合もあります。

KYCをめぐる最新動向と注意点

本人確認をめぐる制度は、大きな転換期を迎えています。偽造書類による不正が相次いだことを背景に、より安全性の高い方式への移行が進んでいます。ここでは2026年時点の最新動向と、利用者が知っておくべき注意点を整理します。

犯収法改正とホ方式の廃止

2027年4月に予定される犯収法の改正で、これまで主流だったホ方式が廃止される見通しです。ホ方式は本人確認書類の画像と顔写真を送る手軽な方法として広く使われてきました。

廃止の背景には、偽造した身分証を使ったなりすまし被害の増加があります。券面の画像だけでは真偽を見抜きにくいため、より確実な方式へ切り替える方針が示されています。

公的個人認証への一本化の流れ

改正後は、マイナンバーカードのICチップを読み取る公的個人認証(JPKI)への一本化が進むと見られています。ICチップに記録された電子証明書を使うことで、書類の偽造では突破できない確認が可能になります。

これは未確定の将来予測ではなく、金融庁が示した改正案にもとづく方向性です。事業者は2027年4月までに、ICチップ読み取りに対応した仕組みへの移行を進める必要があります。

時期主な変更点
現在ホ方式を含む複数の方式が併存
2027年4月以降公的個人認証への一本化が進む見通し

KYCなしで取引するリスク

仮想通貨を本人確認なしで取引できると宣伝するサービスも一部に存在します。しかし、本人確認をしない取引には大きなリスクがともないます。

こうしたサービスは規制の枠外にあることが多く、トラブルが起きても資産が保護されない恐れがあります。金融庁に登録された正規の取引所を選び、正しくKYCを済ませることが、安全に取引するための基本になります。

まとめ:KYCとは安全な取引を支える本人確認の仕組み

KYCとは、金融機関や仮想通貨取引所が利用者の身元を確かめる本人確認手続きです。マネーロンダリング対策として犯収法で義務づけられており、利用者の資産を守る役割も担っています。仮想通貨取引所ではeKYCが主流となり、スマートフォンだけで短時間に手続きを終えられます。

本記事のポイントをおさらいします。

本記事のポイント

  • KYCは犯収法にもとづく本人確認手続きで意味は顧客を知ること
  • 身元確認と当人認証があり仮想通貨取引所ではeKYCが主流
  • 2027年の犯収法改正で公的個人認証への一本化が進む見通し

本記事を通じて、KYCの意味や仮想通貨取引所での手続きの流れ、今後の制度変更まで一通り把握できたかと思います。正規の取引所で正しく本人確認を済ませることが、安心して資産を運用する第一歩になります。

暗号資産事業でのKYC体制の整備や制度改正への対応について相談したい場合は、お気軽にお問い合わせください。

KYCに関するよくある質問

参考文献

  1. 暗号資産の利用者のみなさまへ:金融庁
  2. 犯罪収益移転防止法の解説、パブリックコメント|JAFIC 警察庁
  3. 犯罪収益移転防止法におけるオンラインで完結可能な本人確認方法の概要|金融庁

執筆者

Crypto With 編集部
Crypto With 編集部

編集部

B2B特化のブロックチェーン・暗号資産メディア「Crypto With」の編集部。金融機関やIT企業の意思決定者向けに、国内外の最新技術トレンドや日本の法規制動向など、導入判断に直結する客観的なデータに基づく信頼性の高い実務情報を発信しています。

監修者

Crypto With リサーチチーム
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リサーチチーム

「Crypto With」のコンテンツ監修・リサーチを専門に行う調査チーム。国内外の金融規制や暗号資産市場の動向を追う専門家で構成され、データと根拠に基づく客観的な分析レポート、日本の複雑な法規制の解説を提供。金融機関・IT企業の意思決定に必要な情報を信頼性重視で発信します。

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