仮想通貨の相対取引は違法?違法になる条件と対処法を徹底解説
この記事のポイント
仮想通貨の相対取引は1回限りの個人間取引なら合法だが、反復継続・営利目的・不特定多数の3条件を満たすと資金決済法違反となり、無登録なら3年以下の拘禁刑か300万円以下の罰金の対象になる。相対取引には詐欺やマネーロンダリング関与、税務申告漏れのリスクもある。
「友人に仮想通貨を売ろうと思うけれど、こうした相対取引は違法にならないだろうか。もし後から資金決済法違反だと指摘されたらどうしよう」。
こうした疑問に答えます。
本記事の内容
- 仮想通貨の相対取引の仕組みと取引所取引との違い
- 相対取引が違法になる3つの条件
- 安全に相対取引を行うための注意点
仮想通貨の相対取引は、個人間で1回限り行う分には基本的に違法ではありません。ただし反復継続性・営利目的・不特定多数という3つの条件を満たすと、資金決済法が定める暗号資産交換業に該当し、無登録のままでは違法となります。
本記事を読めば、自分の取引がグレーゾーンに当たらないかを判断する材料が手に入り、詐欺やマネーロンダリング関与といった潜在的なリスクも避けやすくなります。まずは相対取引の基本的な仕組みから確認していきましょう。
仮想通貨の相対取引とは?取引所取引との違い
仮想通貨の相対取引とは、取引所を介さずに売り手と買い手が1対1で価格や数量を交渉し、直接取引を行う方法です。国内における仮想通貨の規制の枠組みの中で注目される手法であり、近年様々な資金移動リスクの監視対象となっています。英語ではOver The Counter(OTC)取引とも呼ばれます。
個人間で行うケースと、取引所が用意する大口投資家向けOTCサービスを利用するケースの2パターンがあります。相対取引の基本を理解しておくと、後述する違法となる条件や安全対策も判断しやすくなります。
相対取引(OTC取引)の定義
相対取引とは、仮想通貨取引所が用意する売買板を経由せず、当事者同士が価格・数量・決済方法を直接取り決めて成立させる取引です。現在の法律の適用範囲内において、取引所の市場価格に縛られないため、双方が合意すれば時価と異なる価格での取引も可能です。特に、仮想通貨を利用した賭博をめぐり仮想通貨カジノの違法性が問われる事案が増えている現状においても、当事者間のやり取りには注意が必要です。
決済手段も現金手渡し、銀行振込、電子マネーなど自由度が高い点が特徴です。
取引所取引との違い
取引所取引は、仮想通貨交換業者が提供するシステムを通じて注文が自動的にマッチングされ、成立する仕組みです。一方、金融商品取引法である金商法の規制にもとづき運営される取引所取引と異なり、相対取引は当事者間の交渉で条件が決まります。
両者の違いは、以下の表のとおりです。
| 比較項目 | 取引所取引 | 相対取引(OTC取引) |
|---|---|---|
| 価格の決まり方 | 市場の需給で自動決定 | 当事者同士の交渉で決定 |
| 取引相手 | 不特定の市場参加者 | 特定の相手 |
| 決済手段 | 取引所指定の方法 | 当事者間で自由に選択 |
| 市場価格への影響 | 大口注文で価格が動きやすい | 市場価格にほぼ影響なし |
| 手数料 | 取引所所定の手数料が発生 | 当事者間の合意次第で無料も可能 |
取引所取引は価格の透明性が高く、誰でも公平に参加できます。一方で大口注文では希望した価格で約定しにくいという弱点があります。
相対取引はこの弱点を補う手段として使われますが、仲介者がいない分、トラブル時の保護が薄くなる点に注意が必要です。
相対取引が選ばれる理由
資金決済法における仮想通貨規制の枠組みに加え、一般的な仮想通貨に関する法律の適用範囲において、相対取引が選ばれる理由は、主に4点に整理できます。
- スリッページを避けられる。取引所取引では大口注文によって希望価格からずれることがありますが、相対取引ではあらかじめ決めた価格で約定できます。
- 市場への影響を抑えられる。大きな注文を出すことが市場に知られず、価格への悪影響を避けられます。
- 決済手段の自由度が高い。現金や電子マネーなど、当事者が合意すればどんな方法でも決済可能。
- 手数料を抑えられる。取引所を介さないため、手数料が発生しないか、発生してもごくわずかで済むことが多いです。
こうした利点から、大口投資家だけでなく、身近な知人同士での仮想通貨の売買にも相対取引が選ばれる場面があります。ただし次章で解説するとおり、条件次第では相対取引が違法となるおそれがあるため、仕組みを理解したうえで慎重に判断することが欠かせません。
仮想通貨の相対取引が違法になる3つの条件
仮想通貨の相対取引は、個人間で1回限り行う分には基本的に問題ありません。ただし一定の条件を満たすと、資金決済法が定める暗号資産交換業に該当し、無登録のまま行えば違法となります。
資金決済法が規制する暗号資産交換業とは
資金決済法では、暗号資産の売買や交換、その媒介・取次ぎ・代理などを「業として」行うことを暗号資産交換業と定義しています。これを内閣総理大臣の登録なしに行うと、法律違反です。
無登録で暗号資産交換業を行った場合の罰則は、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその両方と定められています。「業として行う」の判断は、反復継続性・営利性・対公衆性という3つの要素で総合的に判断されます。
反復継続して取引を行っている場合
反復継続とは、1回限りではなく、繰り返し仮想通貨の売買を行うことを指します。何回以上で反復継続に該当するかという明確な回数基準は定められていません。
ただし月に何度も取引を行う、年間を通じて継続的に取引を行うといったケースは、反復継続に該当する可能性が高いといえます。1回限りの取引であれば、この要件には基本的に該当しません。
営利目的で取引を行っている場合
営利目的とは、仮想通貨の売買によって利益を得る意図があることを指します。友人に時価より高い価格で売却し、差額の利益を継続的に得ようとする行為などが該当し得ます。
なお営利目的の有無は、価格設定や取引の頻度、利益の継続的な発生状況などから総合的に判断されます。単発の取引で利益が出た場合でも、直ちに営利目的と認定されるわけではありません。
不特定多数を相手に取引を行っている場合
不特定多数とは、対公衆性のある取引相手を指し、特定の知人友人に限定されない取引を意味します。SNSで広く取引相手を募集する行為は、この不特定多数への該当性が特に高いと考えられています。
対公衆性は、実際に不特定多数に対して行われている場合だけでなく、そうした行為が想定されている場合も含まれる点に注意が必要です。特定少数の友人間だけで完結する取引とは、法的な扱いが異なります。
グレーゾーンの判断基準
反復継続性・営利目的・不特定多数のいずれも、金融庁の事務ガイドライン上は個別の事案ごとに総合的に判断すると定められており、明確な数値基準は示されていません。友人数人に対して数回にわたり仮想通貨を販売した場合など、該当性の判断が難しいケースも存在します。
グレーゾーンだと感じる取引を検討している場合は、実行前に金融庁の金融サービス利用者相談室や、仮想通貨に関する法律の適用範囲について弁護士へ相談することが推奨されています。自己判断で進めると、後から無登録営業と認定されるリスクが残ります。
相対取引で実際に摘発された事例とトラブルリスク
仮想通貨の相対取引をめぐっては、無登録営業として摘発された事例や、詐欺・マネーロンダリングに発展したケースが複数報告されています。実際の事例を知ることで、自分の取引が抱えるリスクをより具体的にイメージできます。
無登録で仮想通貨交換業を行った摘発事例
2025年11月には、いわゆる相対屋(OTCブローカー)として、2022年3月から2025年3月にかけて約22億2千万円分の仮想通貨を現金に交換していた会社役員が、資金決済法違反の疑いで逮捕されました。手数料として取引額の1.5~3%を得ていたとされています。
2024年3月には、宮崎県の男子高校生が、2022年9月から2023年10月ごろにかけて少なくとも30人とライトコインを売買し、手数料を得ていたとして書類送検されました。2026年1月にも、SNSで集めた客に15%の手数料を上乗せしてライトコインを転売していた無職の男が摘発されています。
SNSでの勧誘が問題となったケース
上記の摘発事例に共通するのは、SNSを通じて不特定多数の相手から集客していた点です。特定の知人友人だけに限定せず、広く取引相手を募る行為は、対公衆性が認められやすくなります。
継続的に取引を重ね、手数料という形で利益を得ていた点も、反復継続性・営利目的の両方に該当すると判断された要因です。単発の個人間取引とは異なり、こうした要素が重なると摘発対象になりやすくなります。
詐欺や持ち逃げに遭うリスク
相対取引では取引所という仲介者が存在しないため、仮想通貨を送金したにもかかわらず、相手と連絡が取れなくなり、対価を受け取れないケースが後を絶ちません。SNSやマッチングアプリで知り合った相手から投資を持ちかけられ、そのまま仮想通貨をだまし取られる相談も数多く寄せられています。
こうした詐欺被害は、原則として雑損控除の対象にもなりません。相対取引を行う際は、取引相手の身元や信頼性を十分に確認する姿勢が欠かせません。
マネーロンダリングへの関与を疑われるリスク
相対取引は、犯罪収益の仮想通貨を現金化する手段として悪用されることもあります。2026年には、SNS型投資詐欺の詐取金をマネーロンダリングしたとして、複数の男女が組織犯罪処罰法違反の疑いで逮捕された事件も報じられました。
取引相手が犯罪収益を仮想通貨に換えていた場合、事情を知らずに応じただけでも捜査対象になる可能性があります。身元の分からない相手との高額な相対取引は、こうした関与リスクを高める点に注意が必要です。
相対取引を安全に行うための注意点
相対取引を行う場合は、法律面と税務面の両方で押さえておくべき注意点があります。ここでは、トラブルを避けながら仮想通貨の相対取引を行うための具体的なポイントを紹介します。
取引相手の身元確認と契約書の作成
取引相手が信頼できる人物かどうかを事前に確認することが、詐欺・持ち逃げ被害を防ぐ第一歩です。氏名や連絡先といった基本情報に加え、可能であれば本人確認書類の提示を求めるとよいでしょう。
契約書には、取引する暗号資産の種類と数量、価格、支払い方法、履行期日などを明記しておきます。取引の過程でやり取りしたメッセージも、後日のトラブル時に備えて証拠として保存しておくことが大切です。
取引記録を残しておく方法
いつ、誰と、いくらで、どの仮想通貨を取引したかを記録しておくと、税務調査や万一のトラブル時に自分の身を守る材料になります。送金履歴やチャット履歴、振込明細などをまとめて保管しておくと安心です。
「相対取引はバレにくい」という誤解を持つ人もいますが、税務署は暗号資産の出入りや保有残高の変動、銀行口座の入出金を監視しています。不自然な資金移動があれば、調査対象となる可能性は十分にあります。
税務上の注意点と確定申告
仮想通貨取引による利益は、原則として雑所得に区分され、他の所得と合算して総合課税の対象となります。友人に時価で売却して利益が出た場合も、所得税の申告対象です。
無償で仮想通貨を受け取った場合や、無利子で貸し借りした場合も、年間110万円の非課税枠を超える利益相当額には贈与税がかかる可能性があります。詐欺被害に遭った場合の損失は、雑損控除の対象にならない点にも注意しておきましょう。
不安なときの相談窓口
グレーゾーンに該当するか判断に迷う場合や、実際にトラブルに巻き込まれた場合は、一人で抱え込まず専門の窓口に相談することをおすすめします。主な相談先は、以下のとおりです。
- 金融庁の金融サービス利用者相談室(法律解釈や取引業者トラブルの相談)
- 消費者庁・国民生活センターの消費者ホットライン(詐欺被害・トラブル全般の相談)
- 警察相談専用電話(詐欺・持ち逃げなど犯罪性が疑われる場合)
- 弁護士・税理士(契約書の作成支援や確定申告・贈与税の相談)
早めに相談することで、違法行為への該当リスクや税務上のトラブルを未然に防ぎやすくなります。
まとめ:仮想通貨の相対取引は条件次第で違法になり得る
仮想通貨の相対取引は、取引所を介さず個人間で価格や数量を交渉する取引方法であり、1回限りの取引であれば基本的に違法ではありません。ただし反復継続性・営利目的・不特定多数という3つの条件を満たすと、資金決済法が定める暗号資産交換業に該当し、無登録での実施は違法となります。
本記事のポイントをおさらいします。
本記事のポイント
- 相対取引は取引所を介さない1対1の取引で、大口取引や柔軟な決済に向く
- 反復継続・営利目的・不特定多数のいずれかに該当すると無登録営業として違法になり得る
- 詐欺・マネーロンダリング関与・税務調査のリスクを避けるには身元確認と記録保存が重要
本記事を読んだことで、ご自身が検討している相対取引が違法な条件に当てはまらないかを確認でき、詐欺や思わぬ税務トラブルを避けるための具体的な対策も把握できたはずです。グレーゾーンだと感じる場合や、既にトラブルに直面している場合は、一人で判断せず専門家への相談を検討してみてください。
仮想通貨の相対取引が違法かに関するよくある質問
参考文献
執筆者
編集部
B2B特化のブロックチェーン・暗号資産メディア「Crypto With」の編集部。金融機関やIT企業の意思決定者向けに、国内外の最新技術トレンドや日本の法規制動向など、導入判断に直結する客観的なデータに基づく信頼性の高い実務情報を発信しています。
監修者
リサーチチーム
「Crypto With」のコンテンツ監修・リサーチを専門に行う調査チーム。国内外の金融規制や暗号資産市場の動向を追う専門家で構成され、データと根拠に基づく客観的な分析レポート、日本の複雑な法規制の解説を提供。金融機関・IT企業の意思決定に必要な情報を信頼性重視で発信します。
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