仮想通貨の損益通算とは?できる範囲と2026年税制改正を解説

税務・会計

この記事のポイント

仮想通貨の損益通算は雑所得内でのみ可能で、給与所得や株式・FXとは相殺できず繰越控除もできません。2026年度税制改正大綱では申告分離課税と3年間の繰越控除の導入が示されています。

仮想通貨の損益通算とは?できる範囲と2026年税制改正を解説

「仮想通貨で大きな損失が出てしまった。この損失を給与所得と損益通算して税金を減らせないだろうか」

こうした疑問に答えます。

本記事の内容

  • 仮想通貨の損失が給与所得等と損益通算できない現行ルール
  • 雑所得内でなら損益通算できる範囲
  • 損益通算ができない中でも使える節税対策

結論から言うと、仮想通貨の損失は給与所得や事業所得と損益通算することができません。

雑所得内での相殺や年内にできる対策を知っておけば、無駄な税負担を避けられます。本記事を読み進めれば、仮想通貨の損益通算をめぐる現行ルールと2026年度税制改正大綱による今後の見通しまで理解できます。

仮想通貨の損益通算とは何か

仮想通貨の損益通算を理解するには、まず仮想通貨税金全体の仕組みのうち損益通算という制度そのものと、仮想通貨の所得区分を押さえておく必要があります。ここを最初に整理しておくと、この後に出てくる「できる」「できない」の判断がすっきりわかるようになります。

損益通算の意味と仕組み

損益通算とは、一定期間内に生じた利益と損失を相殺し、課税対象となる所得の金額を圧縮する制度で、仮想通貨持ってるだけ税金がかかるわけではなく実現した損益にのみ関わります。国税庁の定めでは、損益通算の対象になるのは不動産所得、事業所得、譲渡所得、山林所得の4つの所得区分で生じた損失に限られます。

雑所得の計算で赤字が出ても、原則としてこの損益通算の対象には含まれません。仮想通貨の利益は後述のとおり雑所得に区分されるため、この制度の外側に置かれている点がまず押さえるべきポイントです。

仮想通貨の利益は雑所得に区分される

仮想通貨の売却や交換によって生じた利益は、原則として仮想通貨雑所得に区分されます。国税庁のタックスアンサーでも、暗号資産を使用することにより利益が生じた場合の課税関係として、雑所得に該当する旨が明示されています。

雑所得は、給与所得や事業所得など他の9種類のどれにも当てはまらない所得の受け皿です。副業の収入や公的年金と同じ枠に入り、仮想通貨の利益もこの区分で計算します。

雑所得に共通する3つの特徴

雑所得には、仮想通貨の損益通算を考えるうえで欠かせない3つの特徴があります。特徴を整理すると次のとおりです。

特徴内容
総合課税給与所得など他の所得と合算し、累進税率で課税される
損益通算の対象外赤字が出ても他の所得区分と相殺できない
繰越控除の対象外損失を翌年以降に持ち越して控除できない

この3つの特徴があるため、仮想通貨で損失が出た年は、その損失を他の所得で穴埋めすることも、翌年の利益から差し引くこともできません。この制限が実際にどう影響するのか、続けて具体的に確認していきます。

仮想通貨の損失は給与所得と損益通算できない

仮想通貨の損益通算を考えるうえで、多くの人が最初につまずくのが「損失を給与所得から差し引けない」という現行ルールです。ここでは、相殺できない理由と、実際にどんな影響が出るのかを具体的に見ていきます。

給与所得や事業所得と相殺できない理由

仮想通貨の利益は雑所得に区分され、損益通算の対象となる不動産所得・事業所得・譲渡所得・山林所得のいずれにも該当しません。そのため、仮想通貨で赤字が出ても、給与所得や事業所得の黒字から差し引くことは認められていません。

この仕組みは仮想通貨だけに課された特別な制限ではなく、雑所得全体に共通するルールです。副業収入やアフィリエイト報酬など、他の雑所得も同様に損益通算の対象外になっており、こうしたルールを踏まえて仮想通貨税金計算を行う必要があります。

源泉徴収された税金が戻らない具体例

会社員が給与から所得税を源泉徴収されている場合、仮想通貨の損失をいくら計上しても、その源泉徴収税額の還付を受けることはできません。仮想通貨税金サラリーマンとして、例えば給与所得が500万円あり、同じ年に仮想通貨取引で100万円の損失を出したケースを考えます。

この場合、給与所得の500万円はそのまま課税対象になり、仮想通貨の損失100万円は税額計算に一切反映されません。損失を出した実感がありながら税負担が変わらないため、初めてこのルールを知って戸惑う人が少なくありません。

株式やFXとの損益通算もできない

株式投資の利益は譲渡所得、FXの利益は先物取引に係る雑所得等として、どちらも申告分離課税の対象です。仮想通貨は総合課税の雑所得に区分されるため、所得の性質が異なり通算できません。

同じ雑所得であるFXとも通算できない点は誤解されやすいところです。課税方式や所属する所得区分の違いを一覧にすると、次のようになります。

取引所得区分課税方式仮想通貨との損益通算
仮想通貨雑所得総合課税
株式投資譲渡所得申告分離課税できない
FX雑所得(先物取引等)申告分離課税できない

このように、仮想通貨の損失を減らす手段は他の所得との相殺以外に求める必要があります。次の章で、雑所得内であれば通算できる範囲を確認しましょう。

雑所得内であれば仮想通貨の損益通算はできる

給与所得や株式との損益通算はできない一方で、仮想通貨の損益通算には例外もあります。同じ雑所得の枠内であれば、利益と損失を相殺できる場合があるため、範囲を正しく理解しておきましょう。

仮想通貨同士の利益と損失を相殺する

異なる銘柄の仮想通貨で生じた利益と損失は、同じ年の中であれば相殺できます。ビットコインで利益が出て、イーサリアムで損失が出た場合が典型的な例です。

例えばビットコインで100万円の利益、イーサリアムで30万円の損失、リップルで10万円の損失があったとします。この場合、100万円から30万円と10万円を差し引いた60万円が、その年の課税対象になる所得です。

副業などほかの雑所得とも通算できる

仮想通貨の損益通算は、仮想通貨同士だけでなく、ステーキング税金が課される報酬など他の雑所得との間でも成立します。原稿料やアフィリエイト報酬、シェアリングエコノミーの収入なども雑所得に区分されるため、これらと合算できます。

例えばビットコインの売買で20万円の利益、イーサリアムの売買で10万円の損失、アフィリエイト収入で5万円の利益があったとします。20万円から10万円を引き5万円を足すと、雑所得の合計は15万円になります。

通算できる範囲を確認する方法

損益通算できる範囲を見誤ると、確定申告の内容を後から修正する手間が発生します。自分の所得がどの区分に当てはまるか、次の観点で確認しておくと安心です。

  • 相殺したい所得がどちらも雑所得に区分されているか
  • 同じ年の中で発生した利益と損失であるか
  • 株式やFXなど申告分離課税の所得を混同していないか

雑所得内での相殺は有効な手段ですが、あくまで限られた範囲にとどまります。損失を翌年に持ち越せない繰越控除の制限についても、あわせて押さえておく必要があります。

仮想通貨の損失は繰越控除ができない

損益通算の範囲を確認したら、次に押さえておきたいのが繰越控除の扱いです。仮想通貨の損失は、その年のうちに雑所得の枠内で相殺しきれなければ、そのまま切り捨てられてしまいます。

繰越控除の仕組み

繰越控除とは、ある年に生じた損失を翌年以降に持ち越し、将来の利益から差し引ける制度です。株式投資やFXでは、この繰越控除が最長3年間認められています。

例えば株式投資で2026年に300万円の損失が出た場合、2027年に200万円の利益が出れば全額を相殺してゼロにでき、残りの100万円をさらに2028年へ繰り越せます。損失を出した年だけでなく、複数年にわたって税負担を調整できる点が繰越控除の強みです。

仮想通貨で繰越控除が認められない理由

仮想通貨の利益は雑所得に区分され、繰越控除の対象は株式投資などの譲渡所得や事業所得に限られています。そのため、仮想通貨で損失を出しても、その損失を翌年以降の利益から差し引くことはできません。

同じ雑所得であるFXは「先物取引に係る雑所得等」として申告分離課税の対象になり、例外的に3年間の繰越控除が認められています。仮想通貨は総合課税の雑所得であるため、この扱いを受けられない点が大きな違いですが、仮想通貨分離課税いつから適用されるかによって将来この差は縮まる見通しです。

取引繰越控除の可否繰越できる期間
株式投資できる最長3年間
FXできる最長3年間
仮想通貨できない

損失は発生した年内に処理する必要がある

繰越控除が使えない以上、仮想通貨の損失は発生した年のうちに他の雑所得と相殺しておくことが欠かせません。年をまたいでしまうと、その損失は税務上まったく生かせなくなります。

含み損を抱えた銘柄をあえて年内に売却し、損失を確定させる手法はタックスロスハーベスティングと呼ばれます。次の章では、この考え方を含めた具体的な節税対策を紹介します。

損益通算できない中でできる節税対策

給与所得との相殺や繰越控除が使えないからといって、打てる対策がないわけではありません。仮想通貨の損益通算が限定的な現行制度の中でも、仮想通貨節税につながる年内の工夫で税負担を抑えられる方法があります。

含み損のある銘柄を年内に売却する

同じ年の中で利益が出ている場合、含み損を抱えた銘柄をあえて年内に売却し、損失を確定させる方法があります。仮想通貨同士の損益は雑所得内で相殺できるため、その年の課税対象を圧縮できます。

例えば50万円の利益が出ている年に、30万円の含み損がある銘柄を売却すれば、その年の所得は20万円まで下がります。これは実質的に売却による仮想通貨現金化税金を抑える効果があり、損失を翌年に繰り越せない仕組みだからこそ、利益と同じ年のうちに損失を確定させる調整が有効です。

必要経費を漏れなく計上する

仮想通貨の取引にかかった費用は、経費として所得から差し引けます。経費を正しく計上すれば、それだけ課税対象となる所得を減らせます。

経費にできる支出の例は次のとおりです。

  • 取引所に支払う売買手数料や送金手数料
  • 損益計算ツールや税務ソフトの利用料
  • 税理士に相談した際の報酬
  • 仮想通貨の税務に関する書籍やセミナーの費用

私的な支出と区別できるよう、日ごろから領収書や利用明細を保管しておくことが欠かせません。

損益通算の結果を確定申告に反映する

雑所得内で損益通算をした後は、その結果を仮想通貨確定申告やり方に沿って確定申告書に正しく反映する必要があります。国税庁は暗号資産の計算書を総平均法用と移動平均法用の2種類で無料配布しており、年間取引報告書のデータを転記すれば損益を計算できます。

取引所を複数使っている場合や取引回数が多い場合は、この計算書や損益計算ツールを活用すると、通算後の所得を漏れなく申告書に反映しやすくなります。

まとめ:仮想通貨の損益通算は雑所得の枠内に限られる

仮想通貨の損益通算は、給与所得や株式、FXなど他の所得区分とは相殺できず、雑所得内でのみ認められる仕組みです。仮想通貨同士や他の雑所得との通算は可能ですが、損失を翌年へ繰り越す繰越控除も現行制度では認められていません。

本記事のポイントをおさらいします。

本記事のポイント

  • 仮想通貨の損失は給与所得等と損益通算できない
  • 雑所得内であれば仮想通貨同士や他の雑所得と通算できる
  • 2026年度税制改正大綱で分離課税と繰越控除の導入が見込まれている

現行ルールと今後の改正の見通しを把握できたことで、損失が出た年でも慌てずに対応できるようになります。年内にできる対策を実践しながら、正しい知識をもとに確定申告に臨めます。

仮想通貨の損益通算や税務処理について相談したい場合は、お気軽にお問い合わせください。

仮想通貨の損益通算に関するよくある質問

参考文献

  1. No.2250 損益通算|国税庁
  2. No.1524 暗号資産を使用することにより利益が生じた場合の課税関係|国税庁
  3. 令和8年度税制改正の大綱(1/9)|財務省

執筆者

Crypto With 編集部
Crypto With 編集部

編集部

B2B特化のブロックチェーン・暗号資産メディア「Crypto With」の編集部。金融機関やIT企業の意思決定者向けに、国内外の最新技術トレンドや日本の法規制動向など、導入判断に直結する客観的なデータに基づく信頼性の高い実務情報を発信しています。

監修者

Crypto With リサーチチーム
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リサーチチーム

「Crypto With」のコンテンツ監修・リサーチを専門に行う調査チーム。国内外の金融規制や暗号資産市場の動向を追う専門家で構成され、データと根拠に基づく客観的な分析レポート、日本の複雑な法規制の解説を提供。金融機関・IT企業の意思決定に必要な情報を信頼性重視で発信します。

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