仮想通貨の損失は確定申告が必要か?判断基準とやり方を解説

税務・会計

この記事のポイント

仮想通貨の損失のみで他に所得がなければ確定申告は原則不要だが、住民税の申告基準は別で、扶養判定や翌年以降の取引記録整備のためにあえて申告する意味がある。損益通算や繰越控除は認められず、雑所得内でのみ損益を相殺できる。

仮想通貨の損失は確定申告が必要か?判断基準とやり方を解説

「仮想通貨で大きな損失が出てしまった。確定申告はしなくていいのか、それとも申告しておかないと後で困ることがあるのか判断できない」

こうした疑問に答えます。

本記事の内容

  • 仮想通貨の損失で確定申告が必要になる基準
  • 損失をあえて申告する意味
  • 損益通算できない仕組みと申告の具体的な手順

結論から言うと、仮想通貨の損失だけであれば確定申告は原則不要ですが、住民税や扶養の判定、翌年以降の記録整備を考えると、あえて申告する意味がある場合も少なくありません。

本記事を読み進めれば、仮想通貨の損失に確定申告が必要になる基準から、損益通算できない仕組み、実際の申告手順まで理解でき、自分の状況に合った判断ができるようになります。

仮想通貨の損失で確定申告は必要か

仮想通貨で損失が出た場合、確定申告が必要かどうかは所得の状況によって変わります。まずは仮想通貨税金の原則となる考え方と、申告が必要になる例外パターンを押さえておきましょう。

損失だけなら確定申告は原則不要

仮想通貨の年間損益がマイナスの場合、その取引を理由とした確定申告は原則として不要です。確定申告は所得税を計算するための手続きであり、所得がない年には納める税金も発生しません。

給与所得者であれば、給与以外の所得が年間20万円以下のときも申告が不要になる基準があります。仮想通貨現金化税金が発生しておらず損失のみの年は、この所得金額をゼロとして扱うため、他に申告すべき所得がなければそのまま何もしなくて問題ありません。

他の雑所得や控除の利用があれば申告が必要

仮想通貨以外に副業収入や公的年金などの雑所得がある場合は、話が変わります。仮想通貨の損失と他の雑所得を合算してもなお20万円を超える所得があれば、確定申告が必要です。

また、医療費控除やふるさと納税のワンストップ特例を使わない寄付、住宅ローン控除の初年度適用などを受けたい人も、確定申告そのものが必須になります。この場合、仮想通貨で損失が出ていても、申告書には所得区分ごとの金額を正確に記載しなければなりません。

状況確定申告の要否
仮想通貨のみ損失で他に所得なし不要
他の雑所得と合算して20万円超必要
医療費控除・住宅ローン控除などを利用必要

判断に迷ったときの基準

自分のケースが申告不要にあたるか判断しづらいときは、まず年間の損益をすべて洗い出すことから始めます。仮想通貨の損益に加え、副業やフリマアプリの売却益など他の雑所得も含めて合計額を出すと、判断の基準がはっきりします。

合計がマイナスであっても、住民税の申告義務が別に生じるケースがあるため、所得税だけで判断を終えないことが大切です。あえて申告しておく意味については、続く見出しで具体的に取り上げます。

仮想通貨の損失をあえて確定申告する意味

損失だけなら申告不要というのはあくまで所得税の話です。それでも申告をしておく方が良いケースがいくつかあるため、順番に見ていきましょう。

住民税の申告は所得税と基準が異なる

所得税には給与以外の所得が20万円以下なら申告不要という基準がありますが、住民税にはこの基準がありません。仮想通貨の損失が20万円以下で所得税の確定申告をしなかった場合でも、住民税の申告は別途必要になります。

仮想通貨住民税申告やり方は、住所地の市区町村役場の窓口で行います。所得税の確定申告をすれば、その情報が自治体へ連携されるため、住民税の申告を二重に行う手間を省けます。申告を怠ると、後から市区町村に発覚したときに延滞金などのペナルティが生じる可能性があるため注意が必要です。

扶養や社会保険の判定に影響することがある

配偶者控除や扶養控除の判定は、仮想通貨の利益と損失を相殺した後の純所得で行われます。年間を通じて損失が出ていれば、その分だけ判定の基準となる所得が小さくなり、扶養から外れるリスクを避けられる場合があります。

一方で、年の途中までは利益が出ていて後半に損失で相殺したケースでは、正確な損益を申告しておかないと扶養の判定を誤ってしまう恐れがあります。所得の内訳を明らかにする意味でも、損益の記録と申告は重要な役割を果たします。

翌年以降のために取引記録を整備できる

仮想通貨の税務調査は、取引所からの情報を突き合わせて行われることがあります。ステーキング税金などの受取分と損失を通算する場合も、損失が出た年でもあえて損益計算書を作成し申告しておくと、その年の取得価額や損益の内訳が公的な記録として残ります。

翌年以降に利益が出た際、前年までの取得価額を正確に引き継げるため、計算ミスや申告漏れの防止につながります。次の見出しでは、損益通算ができない現行のルールをあらためて確認します。

仮想通貨の損失は損益通算できない仕組み

あえて申告するかどうかを考えるうえで、仮想通貨の損失が仮想通貨損益通算の対象外であることを正しく理解しておく必要があります。ここでは現行ルールをあらためて整理します。

給与所得や事業所得とは損益通算できない理由

仮想通貨の利益は雑所得に区分されます。国税庁のタックスアンサーによると、雑所得の計算で生じた損失は、雑所得以外の他の所得と通算できません。所得税法で損益通算が認められているのは不動産所得、事業所得、譲渡所得、山林所得の4つのみで、雑所得はこれに含まれないためです。

そのため、仮想通貨で100万円の損失が出ても、その分を給与所得から差し引いて源泉徴収された税金を取り戻すことはできません。この制限は仮想通貨だけでなく、副業収入など他の雑所得にも共通するルールです。

雑所得内であれば損益を相殺できる

損益通算が一切できないわけではありません。仮想通貨同士の損益や、公的年金など同じ仮想通貨雑所得区分に属する所得となら相殺が可能です。複数の取引所で取引している場合も、雑所得内であればまとめて損益を計算できます。

一方で、株式の譲渡所得やFXの先物取引に係る雑所得等は申告分離課税の対象で、仮想通貨とは所得区分が異なります。同じ投資でも税制上の扱いが分かれる点に注意が必要です。

取引所得区分仮想通貨の損失との通算
仮想通貨同士雑所得(総合課税)できる
公的年金など他の雑所得雑所得(総合課税)できる
株式投資譲渡所得(申告分離課税)できない
FX先物取引に係る雑所得等(申告分離課税)できない

損失は翌年に繰り越せない

株式やFXには、損失を最長3年間繰り越して将来の利益と相殺できる繰越控除の制度があります。仮想通貨にはこの制度が認められておらず、その年に相殺しきれなかった損失は消滅してしまいます。仮想通貨分離課税いつから適用されるかによって、将来的にはこの繰越控除が導入される見通しもあります。

含み損を抱えた銘柄がある場合、利益が出ている年のうちに売却して損益を相殺する調整が唯一の実質的な対策です。次の見出しでは、実際に申告する場合の具体的な手順を確認します。

仮想通貨の損失を確定申告する手順

損失が出た場合でも申告を選ぶときは、通常の確定申告と同じ流れで手続きを進めます。ここでは実務的な3つのステップを紹介します。

損益計算書を作成する

最初に、年間の取引履歴から損益計算書を作成します。仮想通貨税金計算では総平均法または移動平均法を用いて取得価額を計算し、売却や交換、決済といった仮想通貨の課税タイミングごとの損益を集計します。

複数の取引所を利用している場合は、それぞれの取引履歴をダウンロードしてまとめる必要があります。損益計算書自体は申告書に添付する義務はありませんが、税務署から確認を求められたときに備えて必ず保管しておきましょう。

確定申告書等作成コーナーで入力する

国税庁の確定申告書等作成コーナーでは、仮想通貨確定申告やり方に沿って所得税の申告書作成画面から雑所得の「業務・その他」欄を選び、仮想通貨の収入金額と必要経費を入力します。損失の場合、収入金額より必要経費が上回る内容で入力すると、自動的に所得金額がマイナスとして計算されます。

申告書第二表の所得の内訳欄には、種類に「雑」、種目に「暗号資産」と記載し、利用した取引所の名称や所在地もあわせて記入します。画面の案内に沿って進めれば、複雑な税額計算も自動で処理されます。

  • 取引所ごとの年間取引報告書を用意する
  • 損益計算書の数値を雑所得欄に転記する
  • 第二表の所得の内訳を記入する

住民税申告書を提出する場合の流れ

所得税の確定申告書を提出すれば、その内容が自治体に連携されるため、住民税の申告書をあらためて提出する必要はありません。一方、所得税の申告をしない場合は、住所地の市区町村役場に住民税の申告書を別途提出します。

住民税申告書の様式は自治体ごとに異なるため、役場の窓口やウェブサイトから入手します。提出期限は所得税の確定申告と同じく、原則として翌年3月15日までです。

まとめ:仮想通貨の損失の確定申告は原則不要でも状況次第で必要になる

仮想通貨の損失は所得税の確定申告が原則不要ですが、他の雑所得や控除利用の有無、住民税の基準、扶養の判定によっては申告した方がよいケースがあります。損益通算や繰越控除ができない仕組みを踏まえたうえで、自分の状況を整理することが大切です。

本記事のポイントをおさらいします。

本記事のポイント

  • 損失のみなら所得税の確定申告は原則不要
  • 住民税や扶養の判定を理由にあえて申告する価値がある
  • 損益通算や繰越控除はできず年内の記録整備が重要

本記事を通じて、仮想通貨の損失で確定申告が必要かどうかを自分で判断できるようになり、住民税の申告漏れや扶養判定のミスといった思わぬ不利益を避けられます。

仮想通貨の税務処理や申告の判断に迷う場合は、お気軽にお問い合わせください。

仮想通貨の損失の確定申告に関するよくある質問

参考文献

  1. No.1524 暗号資産を使用することにより利益が生じた場合の課税関係|国税庁
  2. No.2250 損益通算|国税庁
  3. 【確定申告書等作成コーナー】-仮想通貨の取引に係る収入がある場合|国税庁

執筆者

Crypto With 編集部
Crypto With 編集部

編集部

B2B特化のブロックチェーン・暗号資産メディア「Crypto With」の編集部。金融機関やIT企業の意思決定者向けに、国内外の最新技術トレンドや日本の法規制動向など、導入判断に直結する客観的なデータに基づく信頼性の高い実務情報を発信しています。

監修者

Crypto With リサーチチーム
Crypto With リサーチチーム

リサーチチーム

「Crypto With」のコンテンツ監修・リサーチを専門に行う調査チーム。国内外の金融規制や暗号資産市場の動向を追う専門家で構成され、データと根拠に基づく客観的な分析レポート、日本の複雑な法規制の解説を提供。金融機関・IT企業の意思決定に必要な情報を信頼性重視で発信します。

関連記事

税務・会計

エアドロップの税金はいくら?計算方法と確定申告のやり方まで

エアドロップの税金はいつ・いくらかかるのか。計算方法や確定申告が必要になる条件、時価不明トークンや詐欺コインの扱いをわかりやすく解説します。

Crypto With 編集部
税務・会計

仮想通貨の確定申告のやり方・必要書類とe-Tax提出手順を解説

仮想通貨の確定申告のやり方を解説します。申告が必要な条件や必要書類、損益の計算、e-Tax提出手順まで2026年の最新情報でわかりやすく紹介します。

Crypto With 編集部
税務・会計

仮想通貨の雑所得とは?総合課税と累進課税をわかりやすく解説

仮想通貨の雑所得とは何か、他の所得区分との違いや総合課税・累進課税の仕組みを解説します。損益通算のルールや確定申告の基準までわかります。

Crypto With 編集部
税務・会計

仮想通貨の損益通算とは?できる範囲と2026年税制改正を解説

仮想通貨の損益通算は給与所得やFXと相殺できず、雑所得内でのみ通算できます。現行ルールと2026年度税制改正大綱の分離課税の見通しを紹介します。

Crypto With 編集部
税務・会計

仮想通貨は持ってるだけで税金はかかる?課税タイミングを解説

仮想通貨は持ってるだけで税金はかかるのか、含み益と実現益の違いや課税タイミングを解説します。売却や交換、決済などの具体例を交えて紹介します。

Crypto With 編集部
税務・会計

仮想通貨の税金計算方法をわかりやすく解説【2026年最新版】

仮想通貨の税金計算方法を解説します。雑所得の税率や移動平均法と総平均法の違い、計算手順とシミュレーションを紹介し、確定申告に役立ちます。

Crypto With 編集部

業界の最新情報をメールで受け取る

週1回、注目の調査記事・ウェビナー・ホワイトペーパー情報を編集部がお届けします。

資料ダウンロード

広告掲載・タイアップのご相談

記事広告・ホワイトペーパー配布・共催ウェビナーなど、リード獲得につながる多様な広告メニューをご用意しています。

無料ニュースレター登録